赤べこ発祥の地・福島県柳津町のJR只見線会津柳津駅舎の再生
会津柳津駅舎は、地元の強い願いで昭和2年に建築され、地域の玄関口、物資輸送の根拠地として大いに賑わった。しかし、利用者の減少に伴い無人となり、駅利用者が通過するのみとなっていた。記憶の詰まった建物を保存し、若い世代を含む住民と共同して観光と地域交流の拠点とした。外観は地域に残る記憶の姿に戻し、内部は既存の内装を生かしながら格子状のヤグラを新たに挿入し、駅舎待合機能に、赤べこ張子工房・カフェ・観光案内所を加えた。
住民・町・JR東日本・建築家が参加する利活用検討会議を通して「多世代が自分の居場所と感じられる駅舎の復元」と「赤べこの張り子制作を中心とした柳津町の発信拠点」という方針づくりと、同会議のメンバーが運営を担うことにつながった。
多様な記憶を紡いできた駅舎は、地域のアイデンティティとなり、検討の場を含めて地域のお年寄りから若い学生まで滞在し活動・交流する場となった。
地方鉄道では多くの駅舎が無人化し維持が困難になっている。また、若い世代の地方移住の意向が高まっており、自治体には活躍の場の提供が求められている。このプロジェクトは無人駅舎活用の一つのモデルケースである。
「会津柳津駅駅舎改修工事実施設計業務委託プロポーザル」にて選定(2024年3月竣工)
所在地:福島県河沼郡柳津町/待合室、観光案内所、カフェ、工房/建築面積:199.11㎡/延床面積:129.19㎡/構造規模:木造・平屋
設計監理:TIT/構造設計:TS構造設計/施工:滝谷建設