所在地:岡山県高梁市宇治町宇治 「元仲田邸くらやしき」隣り
竣工:2017年7月
用途:公衆トイレ・交流広場
規模:RC造一部木造・地上1階・延床面積33㎡
岡山県高梁市の観光拠点である備中松山城と吹屋伝統的建造物群保存地区のちょうど中間に位置する。高梁市が進める「公共トイレからのまちづくり」のトイレ整備事業の第2弾。第1弾の城見橋公園の休憩施設(城まちステーション)に続くプロジェクト。宇治の集落の中心に位置する「元仲田邸くらやしき」に隣接して、宇治の新しいまちづくりの拠点として交流広場と公衆トイレが整備された。地域の方との意見交換を重ねて、共用開始後の運営管理についても議論しながら計画・設計を行った。
地域の景観要素に配慮しながら、新しいシンボルとなる外観とした。地域のお屋敷に多く残る蔵は、漆喰仕上げの保護を兼ねて外壁のコーナー部分を海鼠壁としているものが多くみられ、このことが景観的な特徴となっている。今回の休憩施設においても、外壁のコーナー部分をガラスとして、外壁面の保護をしながら建築の輪郭も特徴づけている。
手洗い空間にはこのコーナー部の開口部から自然光を取り込んでいる。建築全体の換気塔を兼ねた天井の高い手洗い空間は、煙突効果による重力換気でトイレ内の換気を促している。
背景となる元仲田邸や隣地の土塀と呼応するように、地面から2mの高さまではコンクリートの仕上げとしている。このことは、2層分の高さのある外壁の腰部分であり、雨がかりとなることからも有効である。
南側には、地域の方々が活動できる交流広場を設け、広場に面して軒を差しかけてベンチを設け、屋外照明を設けるなど、広場の様々なアクティビティに対応できるようにしている。
夕刻には照明が灯ることで開口部から明かりがもれ、路線バスや送り迎えを待つ高校生などのよりどころにもなる、地域の行燈のような機能も併せ持っている。
写真撮影:井上登