



岡山県高梁市の備中松山城の建つ臥牛山の中腹にある城見橋公園に位置する公共トイレ・休憩所である。備中松山城へ向かう観光客が車からシャトルバスに乗り換えるターミナル拠点であり、公共トイレを中心に、地域の特産品販売、バスの待合い、観光情報の発信、休憩などが主な用途である。
高梁市では、施設整備に先立ち「公共トイレからのまちづくり」として、市内の公共トイレ整備を進めている。市内135箇所の全ての公共トイレの現況調査および管理者ヒアリングを実施し、課題や整備方針を検討してきた。
天守閣の現存する唯一の山城である備中松山城は、近年の山城ブームにより観光客が増加していることから、観光客をもてなす公共トイレ整備が急がれていたこともあり、城見橋公園公共トイレ(城まちステーション)が第1弾として整備された。「公共トイレからのまちづくり」は、トイレ整備だけでなく、施設管理者や地域住民とワークショップを行いながら構想・設計・施工を進めることで、完成後も施設が綺麗に維持され、さらに整備プロセスを通して地域づくりの意識醸成を目指している。城まちステーションにおいても、管理者である観光協会とワークショップを行いながら構想・設計が進められた。施設の愛称を一般公募するなど、施設運営においても地域づくりを意識した取り組みを行っている。
敷地は景観条例地区内にあり、城下町の景観への調和が求められ、切妻屋根により構成している。天守閣と同様に中心性をもつ高い塔の部分は、建築全体の換気塔としての機能を持つ。両端の軒裏部分から自然給気を行い、天井の高い中央の手洗いスペース上部での煙突効果により吸い上げられ、上部ハイサイドから排気を行っている。塔の棟ラインは臥牛山山頂に軸を合わせ、背景となる臥牛山の山並みに沿う屋根形状とした。3つの切妻屋根で構成される全景は、県下3大踊りのひとつ「備中たかはし松山踊り」での女性が編み笠をかぶり、両手を広げた姿にも似る。高梁らしい地域資源を活かした周辺地域の景観形成モデルとなることをめざした。
内部はアクセス道路側となる北側にトイレを配置し、北側壁面はガラスブロックにより柔らかい自然光を取り込む明るいトイレ空間としている。ガラスブロックはランダムな積み方とし、備中松山城や城下町のまちなかにも多く見られる石垣の伝統的な乱積みを表現している。南側にはシャトルバスの待合や地域産品の販売、観光情報の発信、休憩などに利用できるスペースを設け、多様な観光客のニーズに対応できるようにした。公共トイレという単機能とするのではなく機能の複合化を図り、夏は暑く冬は寒いこの場所で、ここに居るだけで心地のよい場所になることを目指して、開放的で明るいスペースとした。105mm角の木材が均一に並ぶ屋根は軒を大きく出して日射を遮るとともに、屋外にも溜まることのできる軒下空間を生み出している。
所在地:岡山県高梁市
竣工:2015年3月
事業主:高梁市
用途:交流拠点施設、交通拠点施設(バスセンター)、物販店舗、トイレ
規模:木造・地上1階・延床面積151㎡
おかやまおもてなしトイレ 認定
「パブリックレポートvol.12」(2016年7月・TOTO)掲載
「『暮らしの質向上』トイレ事例集」(2016年2月・内閣官房 すべての女性が輝く社会づくり推進室)掲載




